銭湯の記憶、町の記憶。

幕末から昭和まで、人々の暮らしを温め続けた銭湯「戎湯」。今は「甚風呂」として、湯浅の歴史と文化を未来へ伝える物語の舞台となりました。

お知らせ

臨時休業・イベント情報など

9月7日(日)は都合により臨時休館いたします。

日々の情報はHPの最後にリンクしているFacebookやInstagramをご覧ください。休館日などは、随時こちらで更新いたします。

甚風呂とは:時代を越える地域の宝

甚風呂は、醤油醸造発祥の地として知られる湯浅町の重要伝統的建造物群保存地区に佇む、かつての銭湯を再生した歴史資料館です。嘉永年間(1848~53年)以前に「戎湯」として創業し、約135年もの間、地域住民の憩いの場として愛されてきました。又経営者の名前から「甚風呂」という呼称で呼ばれていました。その歴史的価値から、空き家となった建物を住民と行政が協同で保存・活用。国からの補助も受け、2009年に大規模な修復工事を経て、新たな文化拠点として生まれ変わりました。建物の物理的な保存に留まらず、かつての賑わいを地域の記憶として継承し、新たな価値を創造する「適応的再利用」の優れたモデルとなっています。

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創業

幕末期

閉業

1985年

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再生

2009年

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入館料

無料

本館の展示:昭和の薫りに触れる

甚風呂の本館では、銭湯として使われていた空間そのものが展示物です。一歩足を踏み入れると、昭和の時代にタイムスリップしたかのような懐かしい世界が広がります。ここでは、当時の人々の暮らしや文化の息吹を間近に感じることができます。

ノスタルジックな銭湯空間と映画ポスター

立ったまま入る珍しい石造りの浴槽、壁を彩る美しいタイル、そして壁面に残る当時の広告看板。そのすべてが、銭湯が単なる入浴施設ではなく、地域の情報交換や交流の中心地であったことを物語っています。現在は存在しない「湯浅信用金庫」の看板など、一つひとつが町の歴史を伝える貴重な資料です。

甚風呂の銭湯空間の浴槽とタイル

↑ 甚風呂の銭湯空間の入口に暖簾です。

甚風呂の銭湯空間の入り口

↑ 甚風呂の浴槽です。手前は立ち湯用

甚風呂の銭湯空間の脱衣所

↑【男湯】壁面には、昭和30年代に放映された映画のポスターが掲示されています。 湯浅町にはかつて、湯浅会館と旭座の2つの映画館があり、風呂場の脱衣場に映画のポスターが貼られていました。 掲示されているポスターは甚風呂の改修工事の際、押入れの長持ちの中から見つかったものをクリーニングして掲示しております。 2本立て50円鑑賞料ですので、当時の物価が偲ばれます。

甚風呂の銭湯空間の番台

↑【女湯】浴室は左右対称に、男湯と女湯に分かれています、甚風呂の浴槽は特徴があり立ち湯(立ったまま入浴する方式)の構造になっています。 奥に見えるのが子供用の浴槽で浅くなっています。 浴槽の縁には御影石が使われており、甚風呂を改修する際当時の店主が道後温泉に旅行に行った際に、御影石の浴槽が気に入りわざわざ瀬戸内から取り寄せて作ったといわれております。

甚風呂の銭湯空間の広告

↑湯浅信用金庫の広告看板、左上のノブを回すと休みを表示できるようになっています。 銭湯は、たくさんの人々が訪れるので、広告看板もたくさんありましたが現存している物はほとんどありません。看板は、女湯の壁面に取り付けられていますが、銭湯の営業当時は壁絵が描かれていたそうです。 

甚風呂の銭湯空間の休憩所

↑ 入り口を入ってすぐに有るのが番台です。  番台は入浴料を徴収する所ですが、男湯と女湯の双方を監視できる場所に作ってあります。  番台の前の脱衣所には、男湯と女湯の仕切りがありますので双方からは見えません、 甚風呂では仕切りは取り外しており広い空間になっています。  番台に座って記念撮影をする方が多く、特に男性には人気があります。

別館の展示:湯浅独自の文化を識る

本館から小道を進んだ先にある古民家を利用した別館では、湯浅町に根付く独自の文化と、町並み保存の取り組みを紹介しています。地域のアイデンティティを再発見し、未来へ継承するための重要な拠点です。

学問の神様を飾る風習

湯浅町ではかつて、五月の節句に武者人形と共に学問の神様・菅原道真公を飾る「天神飾り」という珍しい風習もありました。これは、子どもの健やかな成長と学業成就を願う親心が込められた、日高地方にも見られる地域固有の文化です。昭和20年代頃に一度は廃れましたが、その文化的価値を伝えるため、この別館で大切に展示・紹介されています。

湯浅の天神飾り1

↑ 湯浅の天神飾りの様子です。

湯浅の天神飾り2

↑ 菊池海荘の子孫 菊池家寄贈品です。

運営と保存:地域で支える文化遺産

甚風呂の保存と活用は、一組織の力だけではなく、地域住民、行政、そして国が一体となった取り組みによって支えられています。ここでは、その運営体制と文化財を守るための情熱を紹介します。

運営母体:湯浅伝建地区保存協議会

甚風呂は、地区の住民代表で構成される「湯浅伝建地区保存協議会」が指定管理者として運営しています。住民が主体となることで、地域に根差した活力あるまちづくりを実現しています。

役職 氏名
会長 籔野 博孝
副会長 土岐 祐司
幹事 加納 恒儀
幹事 妻木 良三
幹事 吉本 博一
監事 楠山吉雄  井戸端秀樹
役員 北町・北濱町・北中町・北鍛冶屋町 各地区区長

地域住民の力

運営は、約20名のボランティアの方々によって支えられています。女性スタッフ5人シフト制で来訪者を温かく迎え、施設の説明・展示物魅力を伝える「おもてなし」の心は、甚風呂の大きな魅力の一つです。

『まちなみ交流館』文化財建造物等活用地域活性化事業 (平成25年度)

まちなみ交流館の大規模な保存修理は、文化庁の補助事業として実施されました。総事業費の内訳を以下に示します。

総事業費: 14,839,000円

湯札募金のお願い

湯浅伝建地区保存協議会では、町並みの保存活動や記録(選定20周年に向けて、保存活動・建造物の修復・修景の記録した冊子の発行)等にかかる資金調達のため皆様方からの善意のご協力を「湯札募金」としてお願いしております。つきましては 湯札キーホルダーを作成いたしました。

200円以上の募金いただいた方に1個キーホルダーを進呈しております。(400円以上で2個です)

湯札とは

昔、冠婚祭の時など、近所でお手伝いいただいた方々にお礼として「湯札」という入浴券を配って、その日の労をねぎらいました。

湯札募金箱の画像

↑ 湯札募金箱

湯札キーホルダーの画像

↑ 湯札(手作りで焼印しています)

活動報告:まちなみ瓦版

湯浅伝建地区保存協議会の活動や甚風呂の運営に関する取り組みは「まちなみ瓦版」をこちらでご覧いただけます。

来館案内

所在地〒643-0004 和歌山県有田郡湯浅町湯浅428
開館時間9:30 ~ 16:30
休館日水曜日 (祝日の場合は翌木曜日)
年末年始 (12月29日~1月3日)
入館料無料
電話番号0737-20-2033
メール denken-yuasa@zeus.eonet.ne.jp
jinburo@denken-yuasa.sakura.ne.jp
アクセスJR湯浅駅から徒歩約10分